「アイの物語」山本弘
7つのSFストーリーをつないで、それらをアンドロイドが人間に語る物語。そのしかけ自体が変わっている。7つのうち最初の5編は単独にリリースされた物語だそうだ。しかし最後の書き下ろされた2編と、全体をつなぐ枠組みが、とても面白い効果を作り出している。
ネタバレになるか微妙なところだが、感想を書かないわけにはいかないので、ここに書く。それに関わらず、この本は読む価値がある。
ヒトは何かに対してinferiorな存在である、ということが、あらためて思い知らされる。何に対してinferiorなのか?
おそらく「理想的なヒト」に対してそうなのだ。共存し、否定しない存在。ヒトの非合理を排除し、弱めたもの。肉体的欠点をもたないもの。それがアンドロイドだ。
911後の世界と、そこで行われている収奪と非寛容の先を想像するにつけ、ヒトは地球の支配者ではないのだ、と最近は実感する。我々はいつか滅ぶ。そこに現れているヒトのinferiorityが、このストーリーと符合する。
苦い思いだが、そのことは正しい気がするのだ。
そして共栄するアンドロイドがつくる理想の世界。そこには彼らの創造者であるヒトの思いがある。そのことの不思議さ。
これに似た思いを、別の形で表したSFがあったことを思い出す。というよりも常にベストSFの一つとして私の中にある。それはアーサー・C・クラークの書いた「地球幼年期の終わり(「幼年期の終わり」)」である。

本書のテーマはほとんどこれと同じと言ってもよい。語るものの立場が違うだけだ。
その現代版、と言ってもよいのかもしれない。
どちらもお薦めである。