July 16, 2006

「若冲と江戸絵画」東京国立博物館、および一部の真贋について

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本稿は、いったんアップロードした後に、真贋問題について最後に追加した。

伊藤若冲などの収集で知られるカリフォルニアのプライス・コレクションを中心とした江戸絵画の展観である。コレクションのキュレイターである(エツコ&)ジョー・プライスは「自分は日本の文字がわからない。だから落款などに影響されず、絵のできのみで判断してきた」と語っている。それが、日本では2000年頃まであまり注目されていなかった「異端」、若冲などを先入観にとらわれず集めることになったらしい。

私は、日本画にはあまり詳しくはない。一番身近に感じるのは、紅白梅図屏風の科学分析などで話題になった尾形光琳で、次は出光美術館あたり?で見た長谷川等伯、芸術新潮の特集で目にして、展覧会は行きそびれてしまった曾我蕭白、それにどこかで見た牧渓の猿くらいだ。円山応挙、狩野派などはほとんど名前を知るのみで、意識にない。
そういう状態で見に行ったのだが…

まあとにかく観ることをお薦めする。すばらしい展観である。

若冲の動植綵絵。どうやったらここまで描けるんですか、という感じの微細・緻密な描写。かつそれはグラフィカルなデザイン的センスとしては、とてもダイナミックである。現代の眼からみると「恐ろしくセンスがいい」のだ。
それに加えて、水墨画では、息をこらえたような気合を感じる。ぐっ、ぐっ、と描いて行ったような楕円が鶴になっている。コンテンポラリーに見てもトんでいる水墨たち。
樹花鳥獣図屏風の「枡目書き」に至っては「ほ、本気ですか?、若冲さん」という感じなのだが、とにかく圧倒的である。
(今回私は持って行くのを忘れたのだが、日本画を詳細に見るには、モノキュラーを持っているとよいと思う。)

その他にも江戸期の日本絵画が数多く展観されている。それらを見て思うのは、日本の絵画は、やはり花鳥風月なのだな、ということ。それがいちばんしっくりする。
また江戸時代中期の、絵画のテイストが吹っ飛んだ粋・けれん、さらには洒落、ユーモアのセンスに満ちていることだ。この時期の西欧写実絵画は、ロココの時期だが、作家の意気込みはそれを凌駕しているか、すくなくとも「こちとらも負けちゃいねえぜ」という勢いを感じる。
(とはいうものの、若冲本人は、生地である京都をほとんど出たことはないそうである。)

また、ものをただきちんと描けば、それは美しい、ということが、特に酒井抱一や鈴木其一などの作品からは感じられる。現代の作品からは感じることが難しいことかもしれない。こういう、まっとうに描かれた美しさを観ると、いったいオリジナリティなんてものに何の価値があるのか、とさえ感じてしまう。

展観のしかたに、光のダイナミズムを感じさせるものがあったのも興味深かった。特に金銀の箔を使った作品を、昼光色の蛍光灯と、やや赤みのある電灯で交互に照明し、日中と、夜のろうそくでの屏風や軸の見え方の変化を表現しているわけだが、明かりだけでこれほどに絵の表情が変わるのかと感心した。

会期中にチャンスがあれば何度も行きたい展覧会である。お薦めである。ここを終わると京都、九州、愛知へと回るそうだ。

今回はこの場所に、ある程度長時間居たのだが、さすがに国立博物館。モノがたくさんあることを再認識した。同時に国宝室で展観されている「和歌体十種」を観るために本館へ行ったのだが、通りすがりの部屋に尾形光琳の孔雀立葵図屏風があった。どこかで見たなと思い出すと、燕子花図屏風を見に行った根津美術館で特別展観されていたのだった。あの絵の孔雀は好きなので、まるで旧友に会ったようないい気分だった。

おそらくは、見直すと膨大なものたちがここにはあるのだろう。

関連リンクは「見学に行って来た」というページに詳しいので、ここにリンクしておく。

●真贋問題について加筆

さて、以下に真贋問題について追加することにする。発端はmixiで「プライス・コレクション 鳥獣花木図屏風について」というアンケートが行われているのを目にした時だ。そこでは、枡目がきで展覧会の目玉の一つになっている鳥獣花木図屏風の真贋が問題にされていた。そしてその真贋を問題にしている研究者が書いた一冊の本が紹介されていたのだが、私は今回、偶然にその本を購入していたのだった。

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私は展覧会の図録のできがあまり気に入らなかったので買わず、代わりに問題の屏風を葉書のようにしたものを買った。そして東大の生協書籍部で、伊藤若冲の生涯がコンサイスにまとめられていたこの本をたまたま見つけ、買ったのだ。

書籍の言う通りによくよく本の中の絵(静岡県立美術館蔵)と買った葉書(プライス・コレクションの屏風のレプリカ)を見比べると、遠目にも書籍にある静岡県立美術館の同じ図案の屏風の方が詳細に描き込まれているように見える。少なくとも、両者を比較してみたいな、という気になるできである。

そう言う観点で後からこの情報を知ると、展覧会ではこれら両方が紹介されていてもよかったのではないかと思った。

とはいえ、枡目書きをみた瞬間は、その真贋情報以前に、つよいインパクトは受けた。枡目の微細さについて、これ以上に微細かもしれないものがあるとは、思いつかなかったのだ。

ぜひ静岡県立美術館の作品も観てみたいものだと思った。

Posted by sheemer at July 16, 2006 11:02 AM